岸田首相が掲げる『資産所得倍増プラン』を進める政策の一環としてNISAの抜本的拡充について議論されています。一見投資家にとっては税負担が減る個人投資家にとってポジティブな政策に思えますが、個人的には不安と懸念があり素直に喜べません。
またそのような不安と懸念を抱いている個人投資家は私だけではないと思います。今回はその理由を解説します。
金融所得課税の増税とのセットの可能性がある
岸田首相は今は封印していますが、元々は金融所得課税の増税を主張していました。また「四半期報告書」の見直しなどについても言及したことがあり、マーケットフレンドリーな政治家とは言えません。
一番懸念している点は、NISAを拡充して「貯蓄から投資へ」の流れを作りつつ、拡充後のNISA枠を超えるような売買を行う個人投資家などには金融所得課税の増税する可能性です。
個人的には金融所得課税の増税は「貯蓄から投資へ」に矛盾し、財源的にも大したことはなさそうですので政策的に妥当性はないと思います。しかしNISAを拡充した場合特定口座で取引をする人の割合が減ることになるでしょうから、NISA拡充とセットであれば世論の反対も少なくできると踏んでいる可能性は考えられます。
特定口座の損益と相殺できない
これは現行のNISAでも頭を悩ますポイントです。アクティブな個人投資家は基本的にいくつかの銘柄を選びポートフォリオを組みますが、その中には利益確定できた銘柄もあれば損失確定した銘柄もあるのが普通です。特定口座だけの取引だけの場合は、利益期と損失を相殺でき純利益のみが課税対象となります。
NISA制度はNISA口座で購入した証券で出た利益について課税されないという制度ですが、NISA口座で購入した証券の損失を確定したとしても特定口座の利益と相殺する事はできません。
つまり節税どころか特定口座であれば払わなくて済んだ税金を払うことになることがあるのです。そのためアクティブな個人投資家にとってNISA口座での買付は損失を出してはいけない、絶対に負けられない戦いなのです。