NISAによる株式、経済へのインパクトを考える
NISA拡充について本格的な議論がされていますが、NISA制度は株価形成や経済にとってどういう影響があるのかを解説します。
侮れないNISAによる買い需要
NISAは一般的に中長期投資で使われますので、長期に渡っての買い越しが期待される、圧倒的買い主体です。NISAの残高制度開始以降、増え続けており証券会社の一般NISAの口座残高は2021年末で6兆7,930億円*、つみたてNISAの口座残高は1兆1,442億円*に上ります。
一般NISA口座残高6兆7,930億円の内訳*
上場株式3兆8,614億円(56.8%)
投資信託2兆5,918億円(38.2%)
ETF2,454億円(3.6%)
REIT944億円(1.4%)
内訳の数字は外国株式も含めれているため、どれだけ日本株の比重があるのかはわかりませんが残高的にはかなりのボリュームです。
では株価への影響が出るフローはどの程度なのかを考えてみたいと思います。
2021年勘定での買付額*
一般NISAでの買付額26,769億円
つみたてNISAでの買付額5,769億円
こちらも外国株式が含めれているため、日本株の買付額の正確な金額は分かりませんし、一般NISAはロールオーバー分も含まれているため新規の流入額の正確な数字もわかりません。
しかしながら新規の買付として半分くらいは日本株に流入しているのではないかと推定すると、1年で1.5兆円になり1営業日当たりでは、60億円強の資金流入になります。
ちなみに株価下落時に行われる日本銀行によるETFの買い入れ額は、2021年は激減しており、2021年は8,734億円でした。なので需給的な下支え要因として知らている日本銀行の買いによる資金流入額をすでにNISAによる資金流入は既に超えていると考えられるのです。
*(出所:日本証券業協会利用状況調査)
豊富な家計の預貯金が動くことによる経済・市場の活性化
日本の家計の金融資産に現金・預金が占める割合の高さはたびたび指摘されています。日本銀行の資金循環統計によると2022年6月末の現金・預金は1,102兆円に上ります。この滞留している現金・預金を動かすことができればかなり経済・市場の活性化に繋がるのではないかと思います。
また、仮にこれから日本も物価上昇に伴い金利を上げなければならなくなった場合、企業の資金調達コストは上がり、IPOや増資などでの資金調達環境も厳しくなることが想定されますが、NISA制度を通じて投資家層を広げることで新規の資金調達をしやすい環境を持続的なものにできるのではないかと思います。
現状の現金・預金の多さはネガティブですが、その分これからのアップサイド要因として期待したいところです。