今回は12月21日に東証グロース市場に新規上場(IPO)予定のnoteについて分析します。
事業概要
メディアプラットフォームのnoteを運営しています。noteはSNSやネットで情報収集する人にとっては、馴染みのあるサービスで知名度も結構高いのではないかと思います。
ブログサービスなどと大きく違う点とは広告が出ない点と、収益化の方法が課金という点です。
この収益化も記事ごとの販売や月額課金などがあり、クリエイターがそれぞれにあった収益化の方法を選択することが簡単に出来るようになっています。
noteの収益は課金された代金から一定料率をサービス利用料として徴収するという、典型的なプラットフォーム型ビジネスです。
サービス利用料は以下の事務手数料とプラットフォーム手数料で構成されています。
事務手数料
コンテンツの決済手段により以下の料率を乗じた額を差し引きます。
クリエイターご自身が登録されている決済手段ではなく、購読者の決済手段によります。
クレジットカード決済 :売上金額の5%
携帯キャリア決済 :売上金額の15%
PayPay決済 :売上金額の7%プラットフォーム利用料
売上金額から事務手数料を引いた金額に以下の料率を乗じた額を差し引きます。
有料記事、有料マガジン、サポート、メンバーシップ:10%
定期購読マガジン:20%
業績
noteは急激に売上を伸ばしてきていますが、販管費も増加しており大きな赤字が続いている状態です。
売上が急激に伸びている2020年11月期は巣ごもりによる影響が大きいと推察されます。
上のグラフは21年11月期までの業績ですが、22年11月期の3Qまでの業績は同資料によると売上が1,729百万円で純損失が524百万円となっており増収減益のトレンドが続いています。
販管費が増加している主因は人件費の増加です。
noteのコストは直近の業績で半分くらいが人件費となっています。
強みと懸念点を考察
noteの強みの一つは、テレビ東京や日経新聞、UUUMなどとの資本業務提携により、「クリエイター支援プログラム」としてメディアにクリエイターを紹介するなどが可能となっていて、コンテンツの業界において一定程度プレゼンスは高い事だと思います。プレゼンスの高さは著名クリエイター獲得の優位性として大きいと思います。
noteはクリエイターがコンテンツを創作し、読者が増加し、良いコンテンツは拡散もされて、クリエイターと読者が増えていく、といったサイクルで拡大してきたようです。
そのため、資料によるとnoteの広告宣伝費は他の成長企業と比べて著しく低くなっています。
広告宣伝費が低くてもユーザー獲得が出来るというのは魅力的なモデルであるものの、その分サービスのクオリティを上げるための、人件費も多くなっているため利益面では強みといえるかは微妙だと思います。
noteとしてはクオリティで勝負してコンテンツプラットフォーマーとして勝ちにいく戦略だと思いますが、現状の人件費の水準だと今後もかなり売上を積み増していかないと利益をだすのは難しいでしょう。
広告宣伝費の場合、容易に増やしたり減らしたりとコントロールが出来ますが、人件費の場合一度増やすと削減するのは容易ではありません。
そのため黒字化には時間がかかると思います。
上場の概要
noteの上場は仮条件決定日が12月5日、ブックビルディングが12月6日から12日、上場が12月21日の予定となっています。
想定発行価格は300円で、これを基に計算すると時価総額は44億円程度になります。公募売り出しによる吸収金額も4億円程度になる計算ですので、IPOの規模として大きいものではありません。
公募 が210,000 株で売出し(引受人の買取引受による売出し)が1,069,300 株、オーバーアロットメントによる売出しが 191,800 株となっており、ベンチャーキャピタルなどの既存株主による放出も多くなっています。
巣ごもりの中で急拡大して注目度の高い企業のため、短期的に盛り上がる可能性もありそうですが、中長期的には成長性について慎重に見極める必要があるように思います。
ベンチャーキャピタルが売却するという事は、これ以上値上がりが期待できないのではないかといった連想に繋がることも株価的には懸念点でしょう。また12月はIPOが集中するため資金が分散する可能性もあります。
関連銘柄
noteの既存株主には上場している企業もあります。
保有株数 UUUM(3990)410,000株、テレビ東京ホールディングス(9413)410,000株、イード(6038)277,700株、BASE(4477)48,600株
どの銘柄もそこまで業績にインパクトがあるわけではありませんが、イード(6038)は時価総額が小さいのもあって、noteの上場承認の翌営業日は3%以上の上昇となりました。
イードは業績への影響は軽微としていますが、noteの株価の推移次第ではイードも物色対象になる可能性もありそうなので注目です。
この記事は11月19日時点で公開されている情報を基に作成しています。
IPOに関する情報は稀に訂正や変更される場合がありますので、実際に投資する際は最新の目論見書等もチェックすることをお勧めします。
投資は慎重に自己責任でお願いします。