今回は円安メリット企業の円高進行による業績の下方修正リスクがどの程度あるのかを分析します。
為替動向
ドル円は米国のインフレ加速に伴う急ピッチでの利上げで、年初から円安が進み一時は150円台で推移する場面もありました。
11月10日に発表された米国の消費者物価指数が予想を下回った事で、利上げペース鈍化が意識されドル円は急落しました。
11月21日時点では140円を挟んだ展開となっています。
当面は米国の金融政策次第の展開が続くと思いますが、来年には日本銀行の総裁人事などもあります。
日本の金融政策も変更される可能性もあることから、10月までの円安一辺倒の流れには戻りにくいのではないかと思います。
為替要因での下方修正リスクのある企業
現在の140円前後の水準は円高といえる水準では到底ありませんが、それでも一時期に比べれば10円近く円高が進んでいます。
150円近いレートで業績予想を立てている場合には円安メリットがなくなり、下方修正の要因になる可能性があります。
ほとんどの企業が円安進行を受けて、直近の決算でドル円の想定為替レートを修正しています。
主な円安メリット企業の10月以降のドル円想定為替レート | 直近決算発表日 | |
マツダ | 138円 | 11月10日 |
日産自動車 | 135円 | 11月9日 |
任天堂 | 135円 | 11月8日 |
SUBARU | 133円 | 11月2日 |
トヨタ自動車 | 135円 | 11月1日 |
ソニーグループ | 140円 | 11月1日 |
村田製作所 | 140円 | 10月31日 |
日立 | 130円 | 10月28日 |
信越化学 | 140円 | 10月27日 |
キャノン | 148円 | 10月26日 |
日本電産 | 110円 | 10月24日 |
出所:決算資料 | 11月19日時点 |
主な円安メリット企業のドル円の想定為替レートは140円程度を想定している企業が多いです。
想定為替レートを見直す機会である決算発表は、140円台後半で推移していた10月下旬から11月初旬に行われましたが、その時よりも円高水準で想定されており為替想定については保守的な企業が多いことがわかります。
ただキャノンは148円の想定をしており群を抜いて強気です。弱気のほうでは日本電産の110円が目立ちます。
キャノン以外は現在の140円前後の為替水準では、為替要因の下方修正リスクはないでしょう。むしろ為替の業績感応度が大きいトヨタ自動車などは135円想定でまだ含みがある状態です。
市場の業績予想は、会社予想とは異なり比較的頻繁に修正され、為替の変動も株価には織り込まれるため、為替要因で業績にサプライズが出ることはそんなに多くありません。
円安メリット企業の今後の焦点は、引き続き金利・為替動向に加えて、景気(数量)になります。
米国の景気はGDPNow等を見る限り22年中の景気後退はなく、あるとしても23年だと思います。そのため22年10月~12月に関しては円安メリットが相殺されるほどの数量の減少はないと予想します。
この記事は11月21日時点で公開されている情報を基に作成しています。
投資は慎重に自己責任でお願いします。